2017年9月7日木曜日

通常の1,000倍の太陽フレア発生。8日にもコロナガスが地球に到達へ。人工衛星等への障害についてNICTが注意喚起。

情報通信研究機構(NICT)は7日、通常の1,000倍の太陽フレアを観測したことを発表した。今回のフレアに伴い、高温のコロナガスが地球方向に噴出されたという。NICTは、通信衛星や放送衛星の障害、GPSの後さ増大などの影響が生じる恐れがあるとして、注意を呼び掛けている。



NICTが公表した太陽観測画像
(C)NICT
出典:NICTのプレスリリースより


太陽の黒点群の領域で発生発生する「太陽フレア現象」では、強い紫外線やX線、電波等が放出されることに加え、高温のガス(コロナガス)が放出される場合がある。太陽フレア減少は、規模が小さいものから順に、A、B、C、M、Xにクラス分けされる。今月6日、最大のXクラスの太陽フレア現象が2回にわたり観測されており、中でも2回目の現象は11年ぶりの水準だという。


太陽フレア現象に伴うコロナガス放出により、軌道上の人工衛星などへの影響が懸念されている。我が国の例では、平成15年10月29日未明に発生したデータ中継技術衛星「こだま」(DRTS)の地球センサ異常も、同年の太陽フレア現象に伴う影響とみられている。


NICTによれば、今回地球方向に放出されたコロナガスは、明日8日15時頃から24時ごろにかけて、地球に到来する見通し。NICTは、今後一週間ほど地球に影響を与える可能性があるとして、注意を呼び掛けている。


詳細はNICTのプレスリリースなどを参照。
NICTプレスリリース「通常の1000倍の大型太陽フレアを観測
NICT「宇宙天気予報ポータルサイト

勝浦宇宙通信所、電話設備更新へ。10年前の設備を交換。部品供給への懸念から。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6日、勝浦宇宙通信所の電話設備の更新に関する調達に着手した。JAXAが公表した調達仕様書によれば、現在宇宙通信所で使用している電話設備は、導入から10年以上経過したため、故障時における部品供給が困難となっているという。



勝浦宇宙通信所は外房の千葉県勝浦市に所在する、JAXAの通信施設。直径20~10mのアンテナを用いて人工衛星の追跡・管制が行われている。人工衛星からの電波を受信するとともに、地上からのコマンドを送信する役割だ。JAXAが公表した調達仕様書によれば、現行の宇宙通信所の電話交換設備はもともとJAXAの大手町分室で使用されていたもの。平成23年に大手町分室が廃止されたことに伴い、宇宙通信に移設された。大手町分室時代から起算して10年以上が経過しており、「故障した場合に部品供給が困難」(JAXA)となっている模様。さらに、現在宇宙通信所で使用している電話機のうち、最も多い型式(Dterm85)については、製造メーカーであるNEC/NECプラットフォームズの販売・保守は終了している


今回JAXAは、電話交換機本体の他、停電用多機能電話2台、コードレス電話機2台、デジタル多機能電話機24台を調達する予定。12月25日までの納入を求めている。調達は、価格を評価する一般競争入札で実施され、27日正午までの書類提出を経て、来月3日の入札・開札を予定している。


詳細は、JAXAの入札情報公開システムを参照。
JAXA「入札情報公開システム
JAXA「契約・調達情報

2017年9月6日水曜日

JAXA、沿岸漁業を調査へ。新型衛星「しきさい」の利用拡大に向け。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が沿岸漁業における海況情報(海水温などの海洋の状況に関する情報)の利用実態などを調査することが分かった。6日、JAXAは調査会社の選定に向けて、一般競争入札による調達に着手した。今年度の打ち上げ予定としている気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)で取得したデータを沿岸漁業での活用につなげるため、基礎情報を獲得する狙いがある。



JAXAの調達仕様書によれば、今年度打上げる「しきさい」により、250m~1Km級の水温情報や水色情報の取得が可能となり、これら「しきさい」が観測したデータにより、シラス漁やサワラ引網漁などの操業効率化、赤潮被害の軽減などへの貢献が期待できるという。


「しきさい」をはじめとする人工衛星から取得した情報が、海況の把握や漁場の推定に活用できることについては過去、政府の総合海洋政策本部でも取り上げられるなど、期待が寄せられている。JAXAも、水産資源の減少や魚価安、燃油高などの沿岸漁業を取り巻く状況から、操業効率化に活用できる衛星情報への期待が大きいととらえている。その一方で、実際の沿岸漁業では衛星情報は「あまり利用・普及が進んでいない」(JAXA)という。


今回JAXAは、沿岸漁業におけるニーズを的確に把握することを目的として、「しきさい」打上げ後の観測データの利用を進めるための基礎情報を収集したい考え。北海道や東北を中心に、主として太平洋側の沿岸漁業者に対しヒアリングすることで、海況情報の活用状況や将来的な活用見込み、衛星への期待度などを把握する。対象となるのは、定置網、沿岸はえ縄、刺網、オキアミ漁、シラス漁、養殖など。このほか、海況を利用していない漁業協同組合等20団体以上に対してアンケートを行い、今後の衛星観測データの利用可能性も検討する。これらの調査のため、調査会社を一般競争入札で選定する予定だ。


今回の入札について、JAXAは今月20日に説明会を開催する予定。28日までに必要書類を受け付けたうえで、来月4日には入札・開札が行われる見通し。


詳細は、JAXAの入札情報公開システムを参照。
JAXA「入札情報公開システム
JAXA「契約・調達情報

【平成30年度概算要求】JAXA、1,994億円を計上。「確実に世界的成果を目指す」

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、平成30年度の概算要求として、文部科学省を通じて1,994億円を計上したことが分かった。1日に、奥村理事長が定例記者会見で明らかにした。



現在進めているH3ロケット技術試験衛星9号機(ETS-9)先進光学衛星(ALOS-3)及び先進レーダ衛星(ALOS-4)などのプロジェクトについて引き続き取り組むとともに、国際宇宙探査ミッションの開発研究や深宇宙探査技術実験機(DESTINY+)に新規に取り組むとして、平成29年度の1,537億円に対し、457億円増となる1,994億円を計上した形。


なかでもH3ロケットについては340億円を計上している。JAXAは来年度を、(平成32年度初打ち上げに向けた)「ピークの年」と捉え、今年度比150億円増の予算を要求した形。


新規に予算要求を行うJAXA事業としては、深宇宙補給技術、有人宇宙滞在技術、重力天体離着陸技術、重力天体探査技術に関する技術実証等を目的とした「国際宇宙探査ミッションの開発研究」に約5.5億円、低コスト・小型軽量な宇宙探査技術の実証を行う深宇宙探査技術実験機(DESTINY+)に対し約3億円を計上した。


詳細はJAXAウェブサイトを参照。
JAXA「平成29年9月理事長定例記者会見

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【平成30年度概算要求】深宇宙補給技術、有人宇宙滞在技術など開発研究へ。深宇宙探査技術実証機(DESTINY+)も。(文科省)

2017年9月5日火曜日

KDDI、JAXAからロケット関連回線網を受注。5年で7,713万円。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5日、筑波宇宙センター等とロケットメーカなど各所を結ぶ回線網の調達に関する入札結果を公表した。JAXAが公表した入札結果によれば、KDDIが7,713万円で落札したことが明らかにされている。



筑波宇宙センター
(C)航空宇宙経済新聞


今回JAXAが調達したのは、筑波宇宙センターや相模原キャンパスと三菱重工の名古屋航空宇宙システム製作所名古屋誘導推進システム製作所など国内メーカの各拠点を結ぶ回線など。筑波宇宙センター=三菱重工などとの回線とは別に、内之浦宇宙空間観測所や種子島宇宙センターからは、別にIHIエアロスペースの富岡事業所を結ぶ。


借り上げ期間は今年10月から平成34年9月末までを予定している。入札は価格による一般競争入札で行われた。


詳細は、JAXAの入札情報公開システムを参照。
JAXA「入札情報公開システム
JAXA「契約・調達情報

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JAXA、ロケット関連回線網の調達に着手。筑波宇宙センター等とメーカを結ぶ。一般競争入札で。

国産3D地図がアジア太平洋地域の地理空間情報分野における優秀賞を受賞。NTTデータとRESTEC。

NTTデータリモート・センシング技術センター(RESTEC)は先月24日、両者が提供するデジタル3D地図が、Asia Geospatial Excellence Award(アジア地理空間優秀賞)を受賞したと発表した。アジア太平洋地域における地理空間情報の応用実績、政策利用や優れたイノベーションを表彰する優秀賞として、NTTデータとRESTECが宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携して提供している国産3D地図が評価された形だ。



NTTデータが公表している3D地図画像
(C)株式会社NTTデータ
出典:株式会社NTTデータのウェブサイト「INFORIUM」より


NTTデータとRESTECは、JAXAの陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)が撮影した約300万枚に上る衛星画像をもとに、3D地図を平成26年2月から提供している。5m解像度の標高モデルで世界中の陸地の起伏を表現したのは世界初の取り組みだという。平成27年からは、米国のDigitalGlobeの衛星画像を利用して最高0.5m解像度を実現し、建築物レベルでの起伏表現を反映した高精細3D地図の提供を開始した。


3D地図は高精度、高品質が特徴で、これまでアジアなど60か国以上でインフラ整備や災害対策などに活用されているという。従来NASAなどが提供してきた30m~90m解像度から、5m級へと3Dマップの解像度を大幅に向上させている。「JAXA、RESTEC、MTTデータ。この3つの機関の相乗効果」(NTTデータ社員)によるところが大きいという。平成28年には、「防災・電力・通信・資源・都市計画サービス等の効率化と高度化を実現」したことや「新たな市場拡大に成功」したことが評価され、第2回宇宙開発利用大賞内閣総理大臣賞を受賞したほか、翌年には2016年日経優秀製品・サービス賞「優秀賞 日経産業新聞賞」を受賞している。


今回、「アジア太平洋地域の災害対策やインフラ整備など数多くのプロジェクトを通じて、同地域の経済・社会へ大きく貢献したこと」が評価され、受賞の運びとなった模様。授賞式は23日、マレーシアで行われた。NTTデータとRESTECは、「地理空間情報の利用拡大、市場創出に寄与していきたい」としている。


詳細はNTTデータなどの発表を参照。
NTTデータ「おしらせ

2017年9月4日月曜日

キヤノン電子、衛星機体、衛星画像販売に参入へ。自社衛星の撮像データを公開。

キヤノン電子は先月28日、同社が開発した超小型衛星「CE-SAT-1」の撮像データを公表した。今年6月23日にインドのPSLVロケットで打ち上げられ、高度505Kmの軌道投入に成功していた。今回、キヤノン電子は、CE-SAT-1撮像データの公表に併せ、衛星機体や衛星画像データの販売などに取り組んでいくことを明らかにしている。



CE-SAT-1の観測画像
(C)キヤノン電子株式会社
出典:キヤノン電子株式会社「第79期中間報告書」より


公表は、キヤノン電子の「第79期中間報告書」の一環として行われた。キヤノン電子は宇宙関連分野を「新規事業」として取り組んでおり、現在行っているCE-SAT-1の実証実験を「本格的な事業化に向けたスタート」(同社酒巻代表取締役社長)としている。今後、2年間にわたりCE-SAT-1による地上撮影などの実証テストに取り組み、衛星本体や衛星画像、衛星主要部品の販売などを進めていく予定。


今後、軌道上のCE-SAT-1とキヤノン電子赤城事業所との間で朝夜の1回ずつ、通信を行うという。キヤノン電子は今回のCE-SAT-1の打ち上げ・撮像成功などを受けて、「引き続き、キヤノン電子の宇宙事業への取り組みにご期待下さい」としている。


詳細はキヤノン電子の「中間報告書」を参照。
キヤノン電子「第79期中間報告書

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キヤノン電子ほか4社、商業打上げ輸送サービスに参入へ。企画会社を新設。

チェンジ、JAXAからモバイルアプリケーション管理機能導入に向けた物品・サービスを受注。1,345万円で。

モバイル端末やクラウドの導入支援等を行うチェンジが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)からモバイルアプリケーション管理導入に向けた物品・サービスを受注したことが、1日までに分かった。1日にJAXAが開札した入札により、チェンジが「モバイルアプリケーション管理機能導入に関わる調達」を1,345万円で受注したことが明らかにされている。



今回チェンジが受注した内容は、入札公告などによれば、JAXAに対し物品の販売とサービスの提供をパッケージで行うものとみられる。入札の結果、予定価格に達した応札が存在しなかったため、チェンジを相手として随意契約の交渉を行った模様。


詳細はJAXAのJAXAの入札情報公開システムを参照。
JAXA「入札情報公開システム
JAXA「契約・調達情報

大和リース、種子島宇宙センターにおけるプレハブ会議室整備を受注。615万円、JAXAの入札で。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4日、種子島宇宙センターにおける吉信燃焼試験会議室の賃貸借に関する入札結果を公表した。JAXAが公表した入札結果によれば、大和リースが615万円で落札している。



今回JAXAは、燃焼試験に供する会議室として、プレハブ1棟などの賃貸借を求めていた。賃貸借期間は来年3月末までを予定している。

詳細はJAXAのJAXAの入札情報公開システムを参照。
JAXA「入札情報公開システム
JAXA「契約・調達情報

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JAXA、種子島宇宙センターでプレハブ会議室を調達。「燃焼試験会議室」として使用。

2017年9月3日日曜日

【平成30年度概算要求】サイバーセキュリティ強化に向けて衛星通信の量子暗号化を研究開発。(総務省)

平成30年度概算要求で計上された各府省の計上内容を、新規事項を中心に紹介する。総務省は衛星通信における量子暗号技術の研究開発に3.1億円を計上した。サイバーセキュリティの強化やICTの安心・安全の確保一環として取り組みたい考え。今後、各府省の計上した概算要求をもとに、財務省による査定が行われ、政府予算案がまとめられる見通し。



今回、総務省は、世界的な人工衛星利用の需要拡大と、衛星通信に対するサイバー攻撃防止に向けて、秘匿性の高い衛星通信を実現する技術の研究開発に取り組むため、衛星通信における量子暗号技術を新規事項として概算要求に計上した。研究開発した技術を国際標準化することで、国際競争力の強化も狙う。


量子通信に成功した超小型衛星「SOCRATES」
出典:NICTウェブサイトより


総務省が運営費交付金などを要求している情報通信研究機構(NICT)は今年7月、世界で初めて超小型衛星を用いた量子通信に成功している。エイ・イー・エス(AES)が製造した超小型衛星「SOCRATES」と東京都小金井市との間で、通信を行ったもの。NICTは、この実証実験を通じて「従来の衛星光通信より更に高効率な通信や情報漏えいを完全に防ぐ量子暗号の基盤技術」としている。


詳細は総務省の概算要求関連資料を参照。

2017年9月2日土曜日

【平成30年度概算要求】衛星データの利用拡大進める。オープン&フリー化、データ統合と小型ロケット開発で多面的に取り組む。(経産省)

平成30年度概算要求で計上された各府省の計上内容を、新規事項を中心に紹介する。経済産業省は2030年代早期までの宇宙産業の市場規模倍増を目指すとして、データのオープン&フリー化などを進める。また、衛星データ利用拡大の一環として小型ロケットの開発にも取り組む。今後、各府省の計上した概算要求をもとに、財務省による査定が行われ、政府予算案がまとめられる見通し。



経産省が公開している衛星画像(西之島)
出典:経産省ウェブサイト


経済産業省は2年ぶりに「経済産業政策の重点」として宇宙予算を掲げた。衛星データのオープンフリー化施策や小型ロケットの開発など19億円を計上している。


政府が保有する衛星データを民間利用者の使いやすい形に編集・加工した形で、データを開放するため、環境整備等の事業費として13億を計上している。さらに、準天頂衛星を活用した渋滞緩和システムなど衛星と地上のデータとの統合利用に向けたシステムの整備や衛星利用の拡大に資する小型ロケットの開発にも取り組むとしている。


詳細は経済産業省の概算要求関連資料を参照。

【平成30年度概算要求】深宇宙補給技術、有人宇宙滞在技術など開発研究へ。深宇宙探査技術実証機(DESTINY+)も。(文科省)

平成30年度概算要求で計上された各府省の計上内容を、新規事項を中心に紹介する。文部科学省は、民生予算として最大となる1,950億円の航空宇宙予算を計上した。今後、各府省の計上した概算要求をもとに、財務省による査定が行われ、政府予算案がまとめられる見通し。



過年度の予算要求内容や行政事業レビューなどから、今回の文科省概算要求には宇宙航空研究開発機構(JAXA)の運営費交付金、各種補助金などが含まれているとみられる。既にJAXAが取り組んできた事業のうち、H3ロケットに340億円、先進光学衛星/先進レーダ衛星に65億円、昨年運用を断念したX千天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の代替機に45億円など、いずれも本年度予算から大幅増の金額を計上し、宇宙基本計画等で定めた打ち上げ予定に向けて研究開発を進めたい考え。


来年3月の第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)の日本開催を迎える宇宙探査関連で、新規要求が目立つ。


DESTINY+の想像図
出典:文部科学省「平成30年度 科学技術関係概算要求の概要」


宇宙工学の技術実証と流星群母天体である活動小惑星フェイトン等の探査を目指すDESTINY+には、2億円を新規事業として計上する。DESTINY+は現在、JAXAの宇宙科学研究所で検討が進められており、低コスト・小型軽量な宇宙探査技術の実証を行うことで、深宇宙(一般的に月以遠の領域を指す)への「敷居を下げる」としている。小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)と同型のイオンエンジンを搭載し、薄膜軽量太陽電池パドルや小型軽量アビオニクスなどを特徴とする。


さらに、国際宇宙ステーション(ISS)で蓄積した技術的優位性を踏まえ、「国際宇宙探査に戦略的に参画する」として、深宇宙補給技術、有人宇宙滞在技術、重力天体離着陸技術、重力天体探査技術に関する技術実証等を目的に、5億円を新規計上している。


詳細は文部科学省の概算要求関連資料を参照。
文部科学省「平成30年度科学技術関係概算要求の概要
文部科学省「平成30年度文部科学関係概算要求のポイント
文部科学省「平成30年度概算要求主要事項
文部科学省「平成30年度文部科学省概算要求等の発表資料一覧(平成29年8月)


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2017年9月1日金曜日

JAXA、国際宇宙ステーションで魚を用いた遺伝子実験など実施へ。ゼブラフィッシュなどのNASA搬入・搬出業務を入札で調達。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、近く、国際宇宙ステーション(ISS)でゼブラフィッシュを用いた遺伝子実験などのライフサイエンス実験を実施する予定であることが分かった。少なくとも、「宇宙滞在による筋収縮メカニズムの解明」と「アルツハイマー病や糖尿病などの発症機構の解明」などを目的とした実験2件を実施するとみられる。今月1日、JAXAは、「SpaceX-13ライフサイエンス系実験に係る日米間輸送及び支援」と題し、ゼブラフィッシュなどをケネディー宇宙センターへ搬入し、ISSから回収後に日本に帰国させる輸送業務などの調達に着手した。



日本実験棟「きぼう」(JEM)
(C)NASA


JAXAが公表した調達仕様書によれば、今年11月上旬にゼブラフィッシュを格納したコンテナを5個、筑波宇宙センターからケネディ宇宙センターへ搬入する。また、来年1月上旬にはISSフライト後のゼブラフィッシュをジョンソン宇宙センターから、比較用に地上で実験したゼブラフィッシュをそれぞれ京都大学へ搬入する予定。米国行きはJAXA関係者による機内持ち込み、帰国は冷凍輸送を行う。このほか、タンパク質についても、自然科学研究機構の分子科学研究所とNASA間で同様の輸送を行う予定だ。


JAXAは、今回調達する輸送業務について、「水棲実験(瀬原テーマ)及びアミロイド実験(加藤テーマ)」に伴う輸送としている。ISSにおけるライフサイエンス実験を巡っては、平成27年度に次のテーマが採択されており、今回の実験はこれら実験テーマをISSで実施するものとみられる。


平成27年度「きぼう」利用フィジビリティスタディテーマ募集選定案件(選定された12案件中、今回実施されると思われるテーマを抜粋)
  1. ゼブラフィッシュを用いた宇宙滞在感受性遺伝子の同定とその感知機構の解明/京都大学/瀬原教授
  2. 神経変性疾患の発症機構解明に向けた微小重力環境下でのアミロイド線維形成と性状評価/自然科学研究機構/加藤教授



京都大瀬原教授の研究テーマでは、コイ科の小型魚類、ゼブラフィッシュを用いて宇宙滞在による筋肉の収縮メカニズムを解明する。これまでの宇宙実験では、ゼブラフィッシュを宇宙滞在させた結果、骨格筋の維持に関連する遺伝子に変化が見られており、この現象の原因が、遺伝子が微小重力の影響を感受したためなのか、それとも宇宙空間を飛び交う放射線(宇宙線、宇宙放射線)などの影響によるものなのかを明らかにする。


また、自然科学研究機構加藤教授の研究テーマでは、アルツハイマー病や糖尿病などの原因となるタンパク質「アミロイド線維」を、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」(JEM)の微少重力環境下に置き、観察する。地上で予備実験を行ってきた結果、宇宙ではアミロイド線維の毒性が変化し、疾患の発生のしやすさが変化する可能性があるという。具体的には、アミロイド線維は、微小重力環境では形成が比較的遅くなると予想されることから、宇宙ステーションでアミロイドを観察することで、アルツハイマー病や糖尿病などの疾患が発症する仕組みの解明を目指す。


今回、JAXAはこれらの実験に必要なゼブラフィッシュなどをNASAとの間で往来させるための輸送関連業務を調達するとみられる。輸送関連業務の調達は履行能力の事前審査を経て、価格を競争する一般競争入札で行われる。25日までの書類提出を経て、来月5日に入札が実施される予定。実験試料は、ファルコン9ロケットで打ち上げられる米国の「ドラゴン補給船」で搬入されると見られる。


ドラゴン補給線
(C)NASA


ライフサイエンス実験の詳細はJAXAのウェブサイトを参照。
JAXA宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター「~宇宙・加齢・疾病の筋萎縮メカニズムを総合的に解析~
JAXA宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター「神経変性疾患の原因分子「アミロイド線維」の形成機構の解明~
JAXA宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター「平成27年度「きぼう」利用フィジビリティスタディテーマ募集の選定結果について
JAXA宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター「ファルコン9ロケット


ゼブラフィッシュなどの輸送関連業務の調達の詳細はJAXAの入札情報公開システムを参照。
JAXA「入札情報公開システム
JAXA「契約・調達情報