宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、近く、国際宇宙ステーション(ISS)でゼブラフィッシュを用いた遺伝子実験などのライフサイエンス実験を実施する予定であることが分かった。少なくとも、「宇宙滞在による筋収縮メカニズムの解明」と「アルツハイマー病や糖尿病などの発症機構の解明」などを目的とした実験2件を実施するとみられる。今月1日、JAXAは、「SpaceX-13ライフサイエンス系実験に係る日米間輸送及び支援」と題し、ゼブラフィッシュなどをケネディー宇宙センターへ搬入し、ISSから回収後に日本に帰国させる輸送業務などの調達に着手した。
日本実験棟「きぼう」(JEM) (C)NASA |
JAXAが公表した調達仕様書によれば、今年11月上旬にゼブラフィッシュを格納したコンテナを5個、筑波宇宙センターからケネディ宇宙センターへ搬入する。また、来年1月上旬にはISSフライト後のゼブラフィッシュをジョンソン宇宙センターから、比較用に地上で実験したゼブラフィッシュをそれぞれ京都大学へ搬入する予定。米国行きはJAXA関係者による機内持ち込み、帰国は冷凍輸送を行う。このほか、タンパク質についても、自然科学研究機構の分子科学研究所とNASA間で同様の輸送を行う予定だ。
JAXAは、今回調達する輸送業務について、「水棲実験(瀬原テーマ)及びアミロイド実験(加藤テーマ)」に伴う輸送としている。ISSにおけるライフサイエンス実験を巡っては、平成27年度に次のテーマが採択されており、今回の実験はこれら実験テーマをISSで実施するものとみられる。
平成27年度「きぼう」利用フィジビリティスタディテーマ募集選定案件(選定された12案件中、今回実施されると思われるテーマを抜粋)
- ゼブラフィッシュを用いた宇宙滞在感受性遺伝子の同定とその感知機構の解明/京都大学/瀬原教授
- 神経変性疾患の発症機構解明に向けた微小重力環境下でのアミロイド線維形成と性状評価/自然科学研究機構/加藤教授
京都大瀬原教授の研究テーマでは、コイ科の小型魚類、ゼブラフィッシュを用いて宇宙滞在による筋肉の収縮メカニズムを解明する。これまでの宇宙実験では、ゼブラフィッシュを宇宙滞在させた結果、骨格筋の維持に関連する遺伝子に変化が見られており、この現象の原因が、遺伝子が微小重力の影響を感受したためなのか、それとも宇宙空間を飛び交う放射線(宇宙線、宇宙放射線)などの影響によるものなのかを明らかにする。
また、自然科学研究機構加藤教授の研究テーマでは、アルツハイマー病や糖尿病などの原因となるタンパク質「アミロイド線維」を、国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」(JEM)の微少重力環境下に置き、観察する。地上で予備実験を行ってきた結果、宇宙ではアミロイド線維の毒性が変化し、疾患の発生のしやすさが変化する可能性があるという。具体的には、アミロイド線維は、微小重力環境では形成が比較的遅くなると予想されることから、宇宙ステーションでアミロイドを観察することで、アルツハイマー病や糖尿病などの疾患が発症する仕組みの解明を目指す。
今回、JAXAはこれらの実験に必要なゼブラフィッシュなどをNASAとの間で往来させるための輸送関連業務を調達するとみられる。輸送関連業務の調達は履行能力の事前審査を経て、価格を競争する一般競争入札で行われる。25日までの書類提出を経て、来月5日に入札が実施される予定。実験試料は、ファルコン9ロケットで打ち上げられる米国の「ドラゴン補給船」で搬入されると見られる。
ドラゴン補給線 (C)NASA |
ライフサイエンス実験の詳細はJAXAのウェブサイトを参照。
JAXA宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター「~宇宙・
JAXA宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター「~
JAXA宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター「
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ゼブラフィッシュなどの輸送関連業務の調達の詳細はJAXAの入札情報公開システムを参照。
JAXA「入札情報公開システム」
JAXA「契約・調達情報」
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