2013年7月31日水曜日

JAXA、防護服を調達。種子島の燃料充填作業用。不足分を補うねらい。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は31日、スケープスーツの調達を開始した。JAXAの公告によれば、今回調達を行うのは、種子島にて実施される宇宙機の燃料充填作業に供されるもの。現在、種子島において、同製品が不足していることから、必要着数を確保する必要があるという。



スケープスーツとは、衛星への燃料充填作業に際して着用される防護服を指す。衛星の燃料には、ヒドラジン等の毒性物質が利用されるケースもあり、危険を伴う。このため、ヒドラジン等の毒性から、作業者の身体を防護するスケープスーツが必要となる。スケープスーツは人体を密閉することで、ヒドラジンと人体の接触を遮断する仕組みを持ち、着用に際しては空気チューブを通じて毒性のない空気を補給するなど、宇宙服のような形態をしているのが一般的だ。JAXA側のウェブサイトに掲載された燃料充填作業の様子からも、スケープスーツの高い気密性が伺える。


種子島宇宙センターにおいては、スケープスーツが不足しており、今後の燃料充填作業において必要数を揃えため、今回の調達に踏み切ったという。調達は、競争参加者を公募する方式にて実施される。応募締切は8月14日まで。


詳細はJAXAの公告を参照。
JAXA公告「平成25年度 スケープスーツの調達
JAXA契約・調達情報「参加者確認公募の公告

文科省、H-Ⅲロケットに関する政策方針を公表。打上げ能力6トン、開発費1,900億円、JAXA主体で一層の低コスト化図る。

文部科学省は、12日の科学技術・学術審議会において、次期基幹ロケット(いわゆるH-Ⅲロケット)の開発に関する政策動向を報告した。次期基幹ロケットを「市場で評価される実用に供するシステム」として位置付けた上で、「安全保障に係る国家基幹技術」として、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を中心として開発を進める方針が示されている。また、将来の民間移管を視野に、「低コスト化」や「民間企業の積極的な開発参加」を行う方針も示されている。



文科省が科学技術・学術審議会の宇宙開発利用部会に報告した資料によれば、7~8年で約1,900億円を投じて次期基幹ロケットを開発する方針。2~3トン級の地球観測衛星(低軌道)から6トン級の大型静止衛星までの打ち上げ能力を目指す他、ロケット自身による自律点検、自己監視機能の開発により、地上設備の削減も視野に入れる。経済面では、打上げコストの半減を目標に、現行のH-IIAロケットが一機当たり約100億円の打上げコストを要するところを、50~65億円の水準まで引き下げたいとしている。


同報告においては、次期基幹ロケットに関する文科省側の意向も明らかにされている。基幹ロケットが国家基幹技術でありながら民間主体での開発が困難なこと、民間業者の技術統合が必要不可欠であることなどを理由として、JAXAを主体とする開発体制を整備する構想が伺える。また、最近のロシアにおける一連の失敗を例に挙げて、我が国において長期間にわたり新規開発を行っていないことから生じる「重大トラブルへの対応能力や開発能力の低下」への懸念にも言及している。


詳細は文科省報告資料を参照。
文科省報告「次期基幹ロケットを巡る政策動向について

2013年7月30日火曜日

東京海上など損保各社、イプシロンロケット関連保険を受注。

東京海上日動火災保険三井住友海上火災保険など国内損保各社は、1日までに宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施するイプシロンロケットの打上げに係る損害保険を受注した。JAXAが発注した「打上げ危険担保保険」を東京海上日動が、「宇宙賠償責任保険」を三井住友海上が中心となり受注した形だ。



宇宙関連保険には、打上げ時における「発射から軌道投入まで」のリスクを保証する打上げ保険や、ロケットの爆発等による第三者への損害を補償する第三者賠償責任保険などがある。今回、JAXAからは、イプシロンの発射に伴う打上げ保険と賠償責任保険が発注され、損保各社がこれに応じた。保険会社の選定は、両保険ともに企画提案による競争により行われた。


イプシロンロケット試験機 打上げ危険担保保険
幹事会社 東京海上日動
引受会社 三井住友海上
       あいおいニッセイ同和
       損保ジャパン
       日本興亜損保

イプシロンロケット試験機 宇宙賠償責任保険
幹事会社 三井住友海上
引受会社 東京海上日動
       あいおいニッセイ同和
       損保ジャパン
       日本興亜損保


詳細はJAXAによる公示を参照。
JAXA公示「イプシロンロケット試験機 打上げ危険担保保険
JAXA公示「イプシロンロケット試験機 宇宙賠償責任保険
JAXA契約・調達情報「企画競争の公告・選定結果の公告


※2013年7月31日、リンクミスについて修正いたしました。


関連記事
三井住友海上、「損保ビジネス最前線」として宇宙保険を特集。「保険の新たな領域に挑戦」

東京海上など損保各社、国際共同降水観測計画関連の宇宙保険を受注。 全球降水観測計画(GPM)に関する打上げ保険など。

赤外線天文衛星「あかり」プロジェクト終了。経済効果は330億円。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12日、赤外線天文衛星「あかり」(ASTRO-F)のプロジェクト終了経緯等について、文科省の諮問委員会に報告した。報告は、天文データの取得や90億年前までの星の活動状況など、「あかり」プロジェクトを通した研究成果を主要な内容としているが、同プロジェクトによる経済波及効果など、産業面への影響にも言及がなされている。



JAXA側が文科省の科学技術・学術審議会、宇宙開発利用部会(旧、宇宙開発委員会)に提供した資料によれば、「あかり」開発による国内産業の経済波及効果は、一次波及効果200億円程度、さらに消費拡大による二次波及効果が130億円程度創出されたとの試算を報告している。


また、JAXA側は「あかり」による成果として「宇宙用冷凍機の技術的躍進」を挙げている。「あかり」のように、宇宙空間において赤外線による天体観測を行う場合、衛星の望遠鏡自身が発する熱放射が観測の障害となる。このため、赤外線観測装置に必要不可欠となるのが「宇宙用冷凍機」だ。宇宙用冷凍機により望遠鏡の温度を下げ、熱放射を抑制することにより、宇宙空間の微細な光まで観測可能になる。JAXA側は「あかり」開発などを通して、「欧米に比べて10年以上遅れているとされた日本の宇宙用冷凍機は、現在では世界トップの技術となった」としている。


赤外線天文衛星「あかり」(ASTRO-F)
●主契約者 NEC東芝スペースシステム
・望遠鏡担当 ニコンなど
・冷却系担当 住友重機械工業など

その他、東大、筑波大、NICTなど多数が参画。


詳細はJAXA発表のプレスリリースを参照。
JAXAプレスリリース「赤外線天文衛星「あかり」(ASTRO-F)プロジェクトの終了について

2013年7月28日日曜日

JAL、整備工場見学施設をリニューアル

日本航空(JAL)は22日、整備工場の見学施設をリニューアルオープンした。JAL工場見学~SKY MUSEUM~として拡張された施設では、同社の歴代使用機材や整備士、乗務員の業務概要に関する展示が設けられるなど、「企業博物館」「航空博物館」としての側面も強化された模様。



JALウェブサイトによれば、見学は無料で、整備工場の見学を含め90分程度の見学コースが用意されているとのこと。予約はインターネットのみで半年前から申し込み可能。


詳細はJALプレスリリースを参照。
JALプレスリリース「JAL工場見学~SKY MUSEUM~」リニューアルオープン

2013年7月27日土曜日

三菱重工、英ロールス・ロイスと航空エンジンを共同開発

三菱重工は11日、英ロールス・ロイス社が開発するボーイング787向けのエンジンなど、2種類の航空エンジンの開発に参加すると発表した。ボーイング787向けエンジンと、エアバスA350向けエンジンについて、燃焼器モジュールの開発などを担当する見通し。


三菱重工は、今回の共同開発について、国際競争力を強化する絶好の機会としている。同社は、これまでにも米プラット・アンド・ホイットニー社製航空エンジンの開発に参加するなど、国際共同開発を通した事業基盤の拡大を図ってきている。


詳細は三菱重工プレスリリースを参照。
三菱重工プレスリリース「英国ロールス・ロイス社の2つの新型エンジン共同開発事業に参画

JAXA、宇宙食の候補食品を募集。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は24日、日本の家庭料理をテーマとした宇宙食の候補食品の募集を開始した。ご飯、パン、麺類、肉料理、魚介料理、汁物など多岐にわたる品目を対象として、和食に限らず、ハンバーグなど日本の家庭料理を基にした宇宙食の提案を求めている。




JAXAが公開した応募要領によれば、12月2日までを応募期限として、その後、JAXA側による試食等を経て10品目を選定する計画。「宇宙日本食」として採用された食品は、日本人宇宙飛行士をはじめとする国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する各国の宇宙飛行士が口にする可能性もある。


詳細はJAXAが公開の応募要領を参照。
JAXA「宇宙日本食の食品候補リストに基づく食品候補の募集について

NICT、衛星光通信基地局設備を総合評価方式で調達へ。

情報通信研究機構(NICT)は24日、光通信による衛星通信設備の調達手続きを開始した。業者選定は、入札価格および技術提案等を評価する総合評価方式にて行われる見通し。



NICTが公開した仕様書によれば、光通信用地球局における気象状況を衛星回線により伝送し、地球局側の気象状況が光通信に与える影響の調査を目的としているとのこと。基地局設備は、太陽電池、バッテリ等を電源とし、「簡便に運搬可能な大きさ」であることが求められる。


詳細はNICTの公告及び仕様書を参照。
NICT調達情報「光通信環境データ衛星通信設備

2013年7月26日金曜日

JAXA、大気球の放球設備を調達へ。競争参加者の公募を開始。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は18日、オーストラリアにおける気球実験に供する放球設備について、調達手続きを開始した。放球設備の設計・制作およびこれに付随する各種試験をまとめて発注する見通し。



調達は、競争参加者を公募する方式にて実施される。応募締切は8月1日まで。
なお、JAXAが発表した公告によれば、オーストラリアにおける気球実験は平成26年度以降に実施されるとのこと。


詳細はJAXAの公告を参照。
JAXA公告「大型気球放球設備の製作
JAXA契約・調達情報「参加者確認公募の公告

H-2Bロケット及びイプシロンロケット打ち上げへ

5月21日、三菱重工および宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、H-2Bロケットロケット4号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV4)の打ち上げ予定を発表した。また、これと同日付で、JAXAはイプシロンロケットによる惑星分光観測衛星(SPRINT-A)の打ち上げ予定を発表している。



H-2B/HTV4
平成25年8月4日(日)打ち上げ予定


イプシロンロケット/SPRINT-A
平成25年8月22日(木) 打ち上げ予定



詳細はJAXAプレスリリースを参照。
三菱重工・JAXAプレスリリース「H-IIBロケット4号機による宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機(HTV4)の打上げについて
JAXAプレスリリース「イプシロンロケット試験機による惑星分光観測衛星(SPRINT-A)の打上げについて


8月3日、記事件名を修正いたしました。

航空宇宙経済新聞、発足のご挨拶

皆様、はじめまして。

 このたび、航空宇宙経済新聞と題してブログをはじめさせていただきました。名前の通り、航空宇宙産業に関わる話題、情報を不定期に掲載していきます。


 昨今、我が国においては航空宇宙に対して空前の追い風が吹いています。はやぶさ(MUSES-C)の帰還やYS-11以来の国産旅客機、MRJの受注成功を嚆矢として、相次ぐロケットの打ち上げ成功や国産対潜哨戒機、輸送機の開発、はたまた宇宙兄弟などのメディア作品が人気を集めるなど話題には事欠きません。この国の航空宇宙が、これほどまでに脚光をあびたことがあったでしょうか。


 一方、これら明るい話題の陰で、この国の航空宇宙産業には厳しい現実が突きつけられています。平成24年度の我が国の航空宇宙生産額は1.4兆円(日本宇宙工業会発表)。国内メーカーが世界で販売したコンパクトデジカメの売上高に相当する規模です。産業として、まだまだ小規模な状況です。宇宙産業に至っては、0.27兆円。未だ「乳児産業」から抜け出せていない感があります。


そんな航空宇宙をとりまく沢山の希望と、厳しい現実。だからこそ、話題に事欠かないこの国の航空宇宙産業を、このブログでは経済ニュースの観点から掲載、記録していきたいと考えています。ちょっと気になる記事があれば、覗いてみていただけると幸いです。それでは、皆様、何卒よろしくお願いいたします。


平成25年7月26日、夜明け前
このブログのヨチヨチ歩きの第一歩に際して