宇宙航空研究開発機構(JAXA)の森治助教は、10日までに、木星と太陽のラグランジュ点に存在する「木星トロヤ群」からのサンプルリターン計画の構想を明らかにした。JAXA宇宙科学研究所のウェブサイトに掲載されたコラムにおいて言及したもの。小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」で実証した宇宙ヨット(ソーラー電力セイル)技術と、小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)のイオンエンジン技術を組み合わせ、木星圏へ飛行し、地球に帰還する方法で、深宇宙探査を実現したい考えだ。森助教は「イカロス」のプロジェクトリーダーを務めていた。
「木星トロヤ群」は木星と太陽の重力と、小惑星群の遠心力が釣り合うラグランジュ点に存在する小惑星群。トロヤ群の探査により、太陽系の形成過程の解明に資することができるという。トロヤ群の探査を巡っては、過去に森助教が「イカロス」の打上げに際し、「イカロス」がトロヤ群探査に向けた先行技術実証としての位置付けを明らかにしている他、JAXAや国立天文台などの研究者が、日本惑星科学会誌上でトロヤ群の探査を提案するなどしている。
今回、森助教が構想を明らかにしたコラムでは、実現までの課題として、、「イカロス」より10倍も大きな帆を宇宙で展開・制御する技術、「はやぶさ」よりも数倍燃費が良い世界最高性能のイオンエンジンのほか、木星圏という日本が経験したことのない深宇宙探査の技術を開発する必要を挙げている。仮にイカロスの帆(膜面)の大きさをそのまま10倍した場合、約2,000平方メートルとなり、オリンピック用プールを上回る広さの帆を宇宙空間で展開することになる。
今回のコラムは昨年10月にJAXA宇宙科学研究所の機関誌に掲載されたものを、今月10日、ウェブ上に再掲したもの。同コラムでは、木星トロヤ群に続くターゲットとして土星の衛星エンケラドスをターゲットとする考えも明らかにされている。
詳細はJAXAのウェブサイトを参照。
JAXA宇宙科学研究所ISISコラム宇宙・夢・人「第108回:木星のトロヤ群小惑星からサンプルリターン」
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